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イラストや文章を気ままに綴っています。 現在幽白・ヘタリア・オリジナル中心。
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Hermitage(文)

・懐古する露ベースの露日
*後々実在の人物が登場します。苦手な方はご注意ください。*
・続きます。完結したらまとめようと思います。


『私、これから如何して生きてゆけば良いのかしら?』

あぁ、懐かしい人の言葉が。

記憶の淵からよみがえる。

 

 

 

 

 
 

=Hermitage:夕=

 

 

 

 

 


久しぶりに美味しい紅茶が手に入ったので、

何時もつれない彼をもてなそうとふと思い立ったのだった。

リトやラトは用事に出して、丁度退屈を持て余しているし。

僕が彼にやたらくっつくのは半分嫌がらせなのだけど、

(不愉快な表情を隠そうともしないジェットの瞳は酷く苛めたくなる)

今日は、彼は心から喜ぶだろうと思った。

何故なら、僕が招待しようと手紙に記した場所が


エルミタージュ美術館だから。

 

 


「まだ公務が残っているというのに。急に呼び出したと思えば」


速達を出してからそう開けない内に

サンクトペテルブルクに降り立った彼は、予想通り不機嫌な顔をしていた。

何重にも着込んだ羽織の色がばらばらなのと、珍しく無造作に巻かれた

厚いマフラーがその急ぎ様を教えている。


「リトがね、美味しい紅茶をくれたんだ。ぜひ君とご一緒したくって」

「日本時間ではもう深夜ですよ?こちらの予定も考えて下さい」


はぁ、と濃い溜息を洩らしただけで、毒づかないのは気分のいい証拠だ。

飛行機のハッチが開いた途端息が紅茶の湯気のように白く煙る。

僕は、ロシアの冷気に頬を染める彼を見上げるのが例えようもなく好きだった。

・・・だから毎回無理をして飛行機で飛んで来させてるだなんて、

口が裂けても言えないけれど。


「ごめんごめん。それよりさぁ、手紙読んでくれた?」

「あぁ、これですか」


懐から走り書いた紙を取り出して眺め、途端に柔らかく破顔する。

解っていた。不機嫌ぶっていても、彼の心の中は喜びと期待で満ちていた事。

何か振舞えば毒の混入を訝り、僕をあからさまに避ける彼との時間の為の

これは取っておき。


「もう随分と昔ですのに・・・私が此処に一目惚れしてしまったのは」


それは出会って間もない頃の出来事。まだよく覚えている。
金の大理石に照らされた、漆黒の姿。


「忘れる筈がないよ、大好きな君のあの輝かしい笑顔!」


そう、少しオーバーに、でも本心を篭めて嘆ずると、また心にも無い

ことを、と半分呆れながらもくすぐったそうに笑う。

そんな彼を前に、苛めたいのと幸せにしたい、相反する二つの渦巻く感情を

得意の薄い笑顔の下に隠す。


「・・・さて、行こうか。白夜のお茶会はきっと素敵だよ?菊」


相変わらず細い手の甲に、僕は人生二度目の柔らかなキスを落とした。

 

 

 

 





=続きます。=

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プロフィール
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桃晶(momoakira)
年齢:
36
性別:
女性
誕生日:
1989/03/21
職業:
大学生
趣味:
絵を描くこと、文を書くこと、楽器を弾くこと、音楽をつくること
自己紹介:
きれいなもの、ほっとするものが好きです。
色々な絵を描いたり、時には文章を書いたり
できたらいいなぁと思っています。
ラフな絵なんかももしかしたら載せるかも。
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