竦む

まるで蜜の如く甘美に蕩けていた空気が

何時の間にか

立ち竦む秋に昼夜を繰り返し凍った庭池の如く

粘着質に成りきれない冷えた空気に


少女は動けなかった

凍り付く空気の中に感情を押し殺して自失した


行き先は解放か絶望か

自己分析だけ先行しても時が経たねば

じれったい、交わらない、何もかも

少女は一喜一憂する自分自身に腹を立てた


愛も怒りも少しの欲求も表出させては成らない

神経を撫でるに違い無い

怯えて過ごす日々など慣れていた


少女は苛立った

そして空虚な休日は何事も無く


「きっと

殴り蹴られた方がまだ幸せなのだろう」



「おやお嬢さん　それは

狂気というものだ」


何処から聴こえたか等知れない


「お前に夜など見せてやるものか」


そして、そう

悪魔でも天使でもない誰かが嘲笑った


雨が氷を叩く朝だった

少女は狂気すら逃した


もう悪魔は来ない。



愚かな少女はまた己に苛立ちながら生きる

そうして噛んだ空気は氷の味がした













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