イラストや文章を気ままに綴っています。
現在幽白・ヘタリア・オリジナル中心。
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2025.07.23 Wednesday
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最後の紅茶にしようじゃないか(文)
2012.03.23 Friday
タイトルが思いつきませんでした。
・英日
・英が日にふしぎなくすりを●●する話
・暗いというか鬱蒼としています
・多分バッドエンド
とりあえずあれな話なのでご注意ください。
・英日
・英が日にふしぎなくすりを●●する話
・暗いというか鬱蒼としています
・多分バッドエンド
とりあえずあれな話なのでご注意ください。
「俺は随分と考えたんだ、どうしたらお前を手に入れられるんだって」
煙を深く肺に吸い入れた途端、頭の奥に鋭い痛みが走った。
いつものように、午後三時のお茶を楽しんでいる、はずだった。
最近大規模な会議の為イギリスでの滞在期間が長くなり、それ以外にも
用事で訪れる機会が多いとあって、月に数度アーサーさんの自宅で
午後を過ごす事が常となっていた。
今日もそんな一日。ただ普段と異なる点といえば、
薔薇の手入れが済んでいないからといつものサンルームではなく屋内の居間に
通された事、それと、一通りお茶を楽しんだ後珍しい煙草を勧められた事。
フランスの野郎に見つかる前にな、そう悪戯好きな少年の笑みを浮かべる彼に
私はどうしても弱くて、禁煙中なのでと断る言葉は最後まで出てこずに
では少しだけ、と箱の中の一本を受け取った。
気が付けば視界が90度回転し、ティーカップが卓上に不時着する鈍い音と
ともに倒れ込んでいた。
洋風の長椅子に任せた背中一面に細かい冷汗が滲む感覚、それだけが妙に鮮明で
本来全身に繋がるべき神経信号が全て五感に追い詰められたようだった。
視力は正常な色彩を失うかわりに輪郭がおぞましく鮮明に尖っていく。
一体どうしてしまったんだろう、何なのだ、これは。
カツ、と革靴のヒールが一定の間隔で近付く音は顔を顰めたくなる大音量に
鼓膜の内側で増振され、わんわんと脳に響く。
過酸素に陥らないのが不思議なほど速く浅い呼吸の中、頭をようやく擡げると
繊維の一筋一筋がくっきりと浮かぶライトグリーンの虹彩と克ち合った。
「満開の薔薇で告白しても、最高のお茶を淹れてもはぐらかされるだけだった」
がつ、と肩を掴まれて、触れられた布越しに肌が寒くも無いのに総毛立ち
もとより普段通り動かす事すらできない両腕の可動域が完全に失われた。
まるで、抵抗を封じ込める為ではなく、私を憎悪で以って拘束したいと言う様に。
「そうして夜を徹して考えて、俺はようやく気付いたよ。
最もシンプルで、簡単な方法があったじゃないか、ってね」
驚く程冷静な声色に、ひゅ、と息が逆流する。
緩慢だが確実に色彩が混濁していく景色に、燃え尽きた煙草が貼りついている。
脳がけたたましく警告音を発す中、そのオブジェクトを背景から抉り出し
集中力を総動員して解析する。せねばならないと、本能が告げていた。
最初から封の開いた煙草。
記憶は曖昧だが見覚えのある銘柄。馴染みのないアルファベットの配列は、確か・・・
いつの間にか思考の中に沈んでしまっていたのか、意識を引き摺り出す
肩の強い痛みに現状が四方から針となって舞い戻った。
横隔膜から臍にかけて内臓が軋むような腹痛と、悪寒が酷くて歯が鳴り止まない。
皮下組織に喰い込まんばかりの左手とは裏腹に、右手は壊れ物を扱う手付きで
私の頬をそっとなぞる。
指紋の襞ひとつひとつが、表皮に埋まる神経を連続的に刺激する感覚は
延々と続く酩酊と共に脳髄を冒していくようだった。
「ぁ、アーサー、さん、私に一体、何を」
「もう解ってるんだろ?」
口角を上げて、右手を机の上の灰皿に伸ばす。半分ほど燃えた芯を巻いた
粗目の紙は何の刻印もされておらず、随分と作りが甘い。
「それとも、お前のとこは比較的クリーンだから見慣れてないか」
普通のものより一回り太いのは、外国の銘柄だからと思っていたのに。
私は「此れ」を、確かに見た事がある。
上司から手渡された、密輸入に関する書類の束、ほんの数枚の写真。
浮かび上がるのは疑いようも無い明瞭な答えだ。
「・・・どうして、」
信じられなかった。
否、信じたくなかったのかも知れない。
彼は吸殻を床に捨てると、長椅子に体重を預けシャツを乱暴に引き剥がした。
外気に素肌が晒された苦痛と、押し付けられた掌にとうとう悲鳴が漏れる。
そうして性急な様子に初めて、彼もまた正気ではないのだと悟った。
「悪いのはお前だ、お前のせいだ、お前がずっとはぐらかしてばかりだから」
耳元で囁かれる声に震えが止まらない。
はぐらかした事など一度もない、愛してると何度も告げた言葉に何度でも、
私もです、と。あれは全て真実だったというのに。
「ああ最初は満足してたさお前は何時だって答えてくれた、
けれど菊、きっと解らないよなぁ、ドイツやイタリアと楽しそうに喋ってるのを
見るだけでも辛くなってきたんだ、心の底にどす黒いものがどんどん堆積して
いくんだ、なぁ、菊、俺はお前に口付けひとつできやしなかった」
泣きたいほどに美しい、琥珀とエメラルドを混ぜたような虹彩から
無色透明の大粒の涙がぽろぽろと落ちてくる。
噎せ返る嗚咽と乱暴に肌を辿る両腕に反して、感情の表出を忘れてしまった
眉間は微動だにせず、灯りを背にした顔面は恐ろしいほどの無表情だ。
「お前の凛とした背が好きだ、あらゆる事象を映し出すオニキスの瞳が好きだ、
五月の湖みたいなあったかい声が好きだ、象牙色の滑らかな肌が好きだ
全部、お前の全部 ・・・好き、だった」
嗚咽と共に吐き出された慟哭にも似た告白に、瞼すら動かせない。
部屋の風景は視界から急激に遠ざかり、彼がすべてになる。
そうして漸く眉間に皺が寄り、束縛された五感は彼の感情に須らく侵される。
「気高いままの菊を手に入れる事ができないんだったら。
俺と同じ場所まで、菊の方が、堕ちてくればいいんだ」
不自然なほど晴れやかな声色は恐らく諦観の果てなのだ。
彼が煙草の姿をした「此れ」を常用していたか否かなど知る由も無い。
ただ、私の知る由も無い世界で私はあまりに愛されて、そう、
私自身を壊してしまう程に。
・・・あぁ、どうして。
どうして。
いつもの様に、穏やかなお茶の時間、共に過ごすだけでは駄目だったのか。
「アーサーさん、何故、私は、私こそ」
貴方を愛していたのに。
引き絞られた喉は微かに呻くような呟きしか洩らす事は出来ない。
瞳孔の開いた中に泣きそうな自分の顔が映る。其れは後悔してもし切れない、
最早全てが遅かったのだと今更になって気付いた滑稽な表情だ。
I loved you。自分の声すら肋骨に沁みる。眉間の皺は一層深く表情は歪み、
唇は大きく震えて言葉を象る前にその輪郭を崩してしまう。
翠の双窩はみるみる内に絶望に彩られ、肩を掴んだままの両手が緩むかわりに
下肢の衣服を些か乱暴に剥ぎ取られた。
もうかつて世界がどんな色をしていたかもわからない。
一度「此れ」を用いた者の運命を知っている。戻れない、という事実が
私と彼の心臓に音を立てて堆積するのを感じているのは、鋭敏さが限界に達した
五感の齎す幻か。
「貴方を、愛して、いたのに」
私達は一体どこで間違えたのだろう。
二ヶ月前の告白が戯れではなく情愛であると知って尚、それでも同じように
私もです、と返した時から私は彼を知らず内に追い詰めていたのか。
きっと自業自得なのだ。彼の情愛と独占欲から目を剃らした、此れは私の罪だ。
一度でも彼を抱きしめていればこんな事にはならなかったのだろうか。
「菊、愛してる」
もう離さない。離れない、永遠に、お前だけを見ているから俺だけを見て。
やがて世界は形容し難い極彩色に輪郭を溶かし、その後は得体の知れない苦痛に
私達を引きずり込んで、もう二度と正常な形を取り戻す事はないだろう。
二人分の涙が混ざって視界は琥珀色のエメラルドに満たされて、その色は
脳裏に文字通り焼きついて死ぬまで剥がれる事はない。
「…愛して、いたのに」
ああ、どれだけ後悔しても。もう、手遅れだ。
深まるだけの酩酊の中、アーサーさんが幸せならそれでも良いのだと思えてきて、
それが自分自身の思考であるかも最早判断がつかなかった。
瞼を閉じればもうすぐ忘れてしまうだろうつい先程までの笑顔が浮かんで、
戻れない、と頭の隅で反復しながら私はついに甘い絶望の底に沈んでいった。
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きれいなもの、ほっとするものが好きです。
色々な絵を描いたり、時には文章を書いたり
できたらいいなぁと思っています。
ラフな絵なんかももしかしたら載せるかも。
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